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Gomperzian growth curve

ゴンペルツ成長曲線

Gomperzian成長曲線とは、腫瘍細胞の増殖の動態を表す経験的モデルのことを言います。

細胞が増殖する際、腫瘍細胞の増殖を含む多くの場合は2分裂によって増殖します。すなわち、一つの母細胞が二つの娘細胞に分裂することで二倍の数に増殖します。では、一つの細胞から出発し、一時間毎に (実際にはもっとゆっくりですが)分裂するとしたらn時間後の細胞数はいくらになっているでしょうか。素直に考えれば2のn乗個になっていると考えられます。つまり、腫瘍細胞増殖は指数関数的に増殖する事になります。また、細胞集団の大きさは時間を追って増大を続け、無限に大きくなる事になります。

この様な指数関数的増殖モデルは細菌が非常に良い環境中で猛烈に増殖している時には当てはまる動態なのですが、多くの細胞の増殖動態はこの様なモデルには当てはまりません。

実際には細菌の増殖では立上がり期、指数増殖期、頭打ち期の三つの相を含む三相性のS時曲線を描き、多細胞生物の細胞増殖は、たとえそれが正常な増殖コントロールを失った腫瘍細胞ですらさらに複雑です。

腫瘍細胞の増殖に関して、これを詳細に観察し、経験的な動態モデルを考えたのがGomperzという人です。彼によると、腫瘍細胞が増殖する際の増殖率は全細胞数に逆相関します。すなわちある時点での全細胞数をx1とし、y時間経った後の全細胞数をx2とした時、lim(y→0) (x2-x1)/(x1*y)はx1が小さい程大きな値を取るのです。

言い換えれば、腫瘍は小さいとき程激しく増殖する、と言う事になり、これに基づいて成長曲線を描書きますと最初は急激に立上がり、ある時点から緩やかなカーブを描き、最終的には横軸と平行になってしまいます。つまり、腫瘍は無制限に大きくなるのではなく、ある最終的な大きさを目指して 増殖している、と言う事ができます。この増殖の限界が腫瘍そのものの性質に起因しているのか、周囲の環境が許さないためであるのかは未だはっきりはしませんが、恐らくはどちらの関与もあるのでしょう。

これを基にして化学療法における薬物投与の理論をNortonとSimonらが提唱し、Norton & Simonの仮説と呼ばれています。