Header image  

 

杜の大学生の為のちょっとした情報サイト

 
 
    HOME

 

論文紹介一覧に戻る


After Goldie-Coldman--where now?

Green JA, et al., After Goldie-Coldman--where now? European journal of cancer & clinical oncology. 1989 May;25(5):913-6.

概要

Review、といいますか、ともかくoriginal articleではありません。がんの増殖動態に関する古典的な理論の簡単な解説が述べられています。また、この様な古典的理論に基づく化学療法が血液腫瘍などの幾つかの腫瘍に関しては成功を収めたものの、通常の固形腫瘍に関してはあまり効果を挙げていない事に関して、考えられる理由などにも触れられています。

感想

1980年代に出版された、医学論文としては古文と言われるかもしれません。1984年にGoldieとColdmanによる、がんの化学療法における薬剤耐性に関する細胞動態を述べた論文が発表され、Gomperzian増殖曲線を基としたNortonとSimonの理論と合わせて多剤併用化学療法の理論的根拠とされてきました。その後、多くの臨床試験が行われた結果、ある一定の成果は上がっています。例えば白血病における大量化学療法+造血幹細胞移植などはその好例と言えるでしょう。しかし、同様の考えを固形腫瘍に適用しても、なかなか思いどおりの結果は得られませんでした。様々な固形腫瘍において化学療法などの非局所療法の成績は徐々に向上していますが、その多くは腫瘍動態理論に基づくもの、というよりは新規薬剤の開発や支持療法の発達などによるところが多いと考えられます。Norton & Simonの理論、Goldie & Coldmanの理論は間違っているというわけではないのでしょう。ただ、血液腫瘍のように非常に独特の環境において、特定のlineageが増殖している腫瘍に比べれば、固形腫瘍はより複雑なsubpopulationを持っているのかもしれませんし、より周囲の間質細胞との相互作用が複雑であるのかもしれません。この辺りも考えに入れて、新たな腫瘍動態の理論を築かなければならないのかもしれません。